夢の始まり

社会人になってから半年が過ぎた頃、
テレビを見ていた僕は衝撃を受けた。
ダイバーが水深100メートル付近まで潜り、
生きているシーラカンスの横で泳いでいたのだ。
シーラカンスが現代でも生きていることは知っていた。
驚いたのはシーラカンスの横にダイバーがいたこと。
無人カメラを潜らせて撮影しているのではない。
潜水艦で潜って撮影しているわけでもない。
紛れもなくシリンダーを装着した人間が、
シーラカンスの横で撮影していたのだ。
元々、恐竜や生きた化石と呼ばれる生き物が好きな僕は興奮した。
太古の昔から命のバトンを渡し続け、現代まで生きている姿に心惹かれた。
そして100メートルまで潜れるほど技術が進歩している事に感動を覚えた。
色んな感情が爆発する中、こんな考えが頭をよぎった。
「この人たちが出来てるんだから自分にも出来るはず」
「オレもシーラカンスに会うんだ!」
なんの根拠もない考え方だと思うだろう。
でも僕は心の底から出来ると思った。
だってテレビに映ってる人たちだって、
ダイビングを始めたときは初心者だったのだから。
テレビを見終わった僕はパソコンを開き、
どうすればダイビングができるのか調べるのに夢中になった。